○二話

庭の吊りブランコは誰ものせずのにまだ揺れています

月夜の晩は老婆がそこに腰をのせて六角型のクッションを編んでいました
そこがいちばん明るいからです
こしかけているとクッションを編むのにちょうどよい詩(うた)が聞こえてくるのです

風は遠くの森を見たいから
小径のさきに見えるあの森を
忘れ去られたみどり深きあの森を

森の片隅の崩れた墓石が語りだす
からっぽのゆりかごを素足の女(ひと)がおしていた
「ミルクをください」
女の頬を真珠のしづくがつたってつま先を濡らしていた

いまその森はひんやりとただ息をしているだけです
墓石のまえでは闇夜に青白く映るヒヤシンスが凍っています