蜂のこと その28

●ハチミツの精

アラワク族のインディオはハチミツが好きだった。昔は森の中にハチの巣がいっぱいあり、ハチを養蜂しなくても蜜を見つけるこができた。毎日おのをかついで、森に出かけて行く熱心な男がいて、どこにハチミツがあるかぴたりと探し当ててくるのだった。
ある日、いつものように樹木の空洞を伺った。そしておのを当てようとすると、突然、小さな叫び声がした。
「お願いです、切らないで」
驚いた男は手を止めて穴の中にいるものを怖々覗いてみた。
「わたしはハチミツの精で、名前はマパ。この巣を視察していたの。もう少しでわたしの体まで切られてしまうところだったわ。」
手のひらに乗りそうなかわいい妖精と男はすぐに仲良くなった。この日以来、男はハチミツのありかを探すのに少しも苦労をしなくなった。そして妖精は料理が上手で植物の根から酒を造ることも知っていた。こうして男の家にはいつもおいしいご馳走が絶えず、連日連夜、仲間を招待して宴が繰り広げられていた。男には忘れてはいけないことがひとつだけあった。決して、他人の前でマパの名前を大声で呼んではいけないと。もし呼んでしまえば、永遠に男のもとを去ることになるのだった。
ある日も男たちは酒をのんで語りあかしていた。とうとうつぎ足す酒がなくなる程にまで飲み酔い、すっかり上機嫌になっていた男は口をうっかりすべらせてしまった。
「心配するな、マパがすぐに酒をつくってくれるさ」っと。
こう言うなり、男の頭上を小さなハチが飛んで行った。ハチは森に消え去ってしまい二度と戻ってはこなかった。それ以来、男は幸運に見放され、もう二度とおいしいハチミツを見つけることも、美酒に酔うこともできなくなってしまった。

*川井の民話の要約を掲載したので、もうひとつお話を載せてみた。"みつばちの木箱"の話しを作る前に調べていたものの中に中南米の伝説があった。ハニーハンティングの話しだ。ハニムーンや蜜酒というつながりを知ったきっかけの好きな話しのひとつだ。

中南米伝説の旅 ハチミツの精から