蜂のこと その15

●アントン・ヤンシャと蜂の種類

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ところで、このスロベニアには巣門飾りと時を同じくして、偉大な養蜂指導者の活躍があります。その人がアントン・ヤンシャ(Anton Jansa/1734-1773)です。
ヤンシャの本は日本語に翻訳されてないのが残念です。いつか読んでみたいと思います。このヤンシャは青年期に蜂を飼っていました。やがて画家を志してウィーンへ行き優秀な成績で美術学校を卒業しました。ところが、マリア・テレジアにウィーン市内に設立された養蜂学校の初代養蜂指導者にと任命されたのでした。ヤンシャは雄蜂の生態に関して、女王蜂と分封の関係や腐蛆病にかかった蜂群の治癒など理論と実践の両面から「養蜂家の父」といえるにふさわしい名を博しました。
西洋ミツバチにも種類があります。イタリアンとかコーカシアンといった種があるのです。養蜂の世界に少し入りこむと「カーニオラン」というのはよく耳にします。このカーニオランの故郷がなんとスロベニアだったのです。腹部に緑に光る灰色の毛があってスロベニアの養蜂家たちの間では「灰色熊のカーニオラン」という愛称があるほどだそうです。きっとそれほどまでに愛らしい種なのだろうと思います。わたしが見学させていただいている養蜂家のみつばちはイタリアン種です。岩手で見せていただいた横沢さんのところのはコーカシアンなのでしょうか。たぶん種類が違うように見えました。
カーニオランは従順、勤勉、穏和、すぐれた帰巣・定位能力を持つ性質なのだそうです。表記は違うけれどスロベニアの伝統的な巣箱と同じ名称なんだとも思いました。

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日本の伝統的な山蜂の養蜂もおもしろいけれど、世界にはまだきっと知らない場所でいろんなみつばちと人間の付き合い方があるのだろうと思います。その背後にはこの小さな生き物の生態から見えてくるその土地々の自然に気づかされ、それを受けて謙虚に生きている人々がいることに喜びと共感を持たずにはいられないのです。
ところで、今年のApimondia2005(国際養蜂会議)はアイルランドで開催されるそうです。アイルランドというと、またちょっと胸がわくわくします。ケルトの源流はもちろんですが、ここは17世紀後半から19世紀カトリック修道士たちの安住の地となった場でもあります。スケリッグ・マイケル(聖マイケルの岩)はアイルランド最古の初期キリスト教修道院跡で有名な場所です。蜂の巣型僧坊という庵のようなものがいくつも作られているのですから。
信州の長坂にある清春芸術村のラ・リューシュ、蜂の巣型のアトリエはずっと建築要素の高いものですが、この修道士たちの巣庵はよりプリミティブに近い感じがしてとても興味があります。人はずいぶんと長い間蜂に教えられて模倣をしてきたものがあるのだなぁと思ったりするのです。この話しはまた、少しづつ書いてみたいと思います。

資料提供:玉川大学ミツバチ科学研究施設
『ミツバチ科学(HONEYBEE SCIENCE)』2002 VOL.23 No.3 p123-126、スロベニアの養蜂 Franc Sivic
カタログ:LIVING WITH BEES / Franc Sivic
*写真はFranc Sivicさん撮影の本からです。巣箱を移動させるトラックは魅力的です。