蜂のこと その14

●スロベニアの養蜂

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スロベニア共和国はこれまであまり身近に感じたことのない国でした。恥ずかしいことに地図上どこに位置するのかもおぼろげで、どこから独立したのかも曖昧だったりします。旧ユーゴスラビアからの独立国で、隣接する国はイタリア、オーストリア、ハンガリー、クロアチア。クロアチア以外は1度訪れたことのある国で、そう思うと少し親近感もわいてきますし、文化圏の想像がおぼろげでもつくような気がしてきます。
このスロベニアでは国民1000人のうち4人が養蜂家だといいますから立派な養蜂国なのです。Franc Sivicさんは花とみつばちやスロベニアに伝わる伝統的な蜂の巣箱などを写真に撮って紹介している人です。2003年にこのスロベニアの首都リュブリャナでApimondia2003(国際養蜂会議)が開催され、カタログとして販売されていた本をお願いしてSivicさんに送ってもらいました。ページをめくるとリュブリャナの写真が目に映りこみます。山頂に残雪の残る美しいアルプスに囲まれた街だとひと目見て思いました。そうして次々に写真を見ていくと、牧歌的で平穏な山村の田舎にいろどりの鮮やかなかわいらしい木製の蜂小屋がいくつも掲載されています。まるでおとぎ話のような世界です。きっと寒さの厳しい冬を越して春が訪れた時、どんなにか明るく澄みわたって、喜びに溢れた場所なのだろうと想像します。
蜂小屋には冬を乗り越えるために、それから夏の暑さからも守るために、巣箱をタンスの引き出しのように積み重ねてあります。引き出しはそれぞれに赤、青、黄、緑などにペイントされていて、中には昔話のシーンを描いたものまであります。この地方に伝わる伝統的な木箱と蜂小屋のようです。こんなものが、果樹園の中に置かれているのですから夢の世界のように美しいことでしょう。長方形の木造型で前と後ろから開けるこの巣箱をカーニオランと呼ぶのだそうです。
Sivicさんによれば、民芸調の巣箱の絵画は18世紀の中頃「巣門飾り絵画」として、その時代にスロベニアで開花したものだといいます。当時はオーストリア・ハンガリー帝国に含まれていた地域で、どことなくチロル風を思わせたり、あるいは農民田園的な絵画はスイスでよく目にする可愛らしい牛や花のモチーフに類似すると感じます。わたしの想像ですが、おそらくスイスのアルプス地方でもきっと目にすることができるのではないかと思うのです。

資料提供:玉川大学ミツバチ科学研究施設
『ミツバチ科学(HONEYBEE SCIENCE)』2002 VOL.23 No.3 p123-126、スロベニアの養蜂 Franc Sivic
カタログ:LIVING WITH BEES / Franc Sivic