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2006年11月01日

リモート、遠隔

Category: お話あそび

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all photos by Felipe

「はるかに遠い」。そんなことだけを考えるのが大好きだ。
いつだって心のほんのすみっこに遠い大地のことが響いている。「わたしはいつかパタゴニアに立っている」って。
まだ見ぬ原風景に想いをよせて、めぐらした時にぽつぽつと書いていることがある。それが気が向くと「お話あそび」のカテゴリーに掲載している『あるいは たぐい希なき感性の投影…… 気づかぬ詩人へ』だ。『蜂のこと』につづいてこれから少しづつ書いておきたいと思っている。そうして、いつか本当にパタゴニアに立った時、書いたものがすっかり壊されるんだとわかっていてもそうしてみたくなる。
サンチャゴを経由してプンタアレナスという地に、パタゴニア地方の羊牧小屋を喚起して建設されたRemota Hotelがある。チリの現代建築家でアタカマ砂漠などをはじめ数多くのホテルを手がけているGerman del Solがデザインをした。実際にそこへは行ってはいないので、詳細は書けないが、パタゴニア地方という自然の宝庫に、こうした現代的なホテルを建築するにあたり、当然、素材選出、環境への影響を考慮したに違いない。写真から見る材質や形には、さまざまな観点からその特異な地域性を取り入れた配慮がなされているようだ。
ロケーションは人けのない、リモート、遠隔の地だ。Felipeはサンチャゴ大学で建築を学ぶ20代前半の若い学生だ。この青年がプロジェクトでパタゴニアを点々と旅すると時々、写真や土地の様子を知らせてくれる。チリの詩人を誇りに、自国の自然を愛する青年だ。わたしが、これから、ここにパタゴニアの写真を掲載することがあれば、それはサンチャゴから届くこの友人Felipeからのメッセージだ。Felipeが撮影をした写真はRemota Hotelのサイトのpicture galleryにも掲載されている。岩手県の向井田の集落の写真をいくつか見せたとき、彼はこれほど遠い地球の向こう側に、こうした類似したような村落があることにとても興味を覚えたという。それからすっかり気の打ち解ける友だちになった。
パタゴニアは多くの人を魅了する神秘にあふれた大地だ。それだけに、この土地をめぐる開発にはさまざまな国が介入しようとしている。適度に循環できる糸口を見つけだして、勝手ながら、どうかいつまでも神秘さに輝いていてほしい地の果てだ。
ところで、松本民芸館に展示されていた創館者の丸山太郎のことばと筆が美しかった。

美しいものが美しい
では何が美しいかと申しますと色とか 模様とか 型とか材料とか
色々あります その説明があつて物を見るより
無言で語りかけてくる物の美しさを感じることの方が大切です

何時 何処で 何んに使ったかと云うことでなく
その物の持つ美を直感で見て下さい
これはほとんど無名の職人達の手仕事で日常です
美には国境はありません
丸山太郎

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posted: mitsubako: 06:51AM

2006年09月29日

季節はずれ

Category: お話あそび

凛とした空気に、不純の粒子が運ばれはじめると、眠っていた生きものたちが、むずむずとうごめき出す。
ゆるみかけた冬と、かけだしの春の日だまりにあの子は重たい白いムートンを着込んでいた。
三月のころ。

空にはすじ雲、夕焼けいろの風が吹いていて、あの子の半袖から体温を奪っていく。ふわっとひろがる、白いコットンのスカートを両手できゅっとつかんでる。
そして十月。

そのときの光と風にぴったりするものが、あるはずだけど、少しだけ、それにはずれてあの子は感じる。
季節はずれにはっとしていることがある。

posted: mitsubako: 07:22AM

2006年04月28日

最南端の空模様

Category: お話あそび

油断をしているとすぐに雲がかけだしてくる
そうすると真っ青だった空の低いところがおおわれて
雲の翳りにあたりは重くなる

草原に明と暗がくっきりと浮かび上がってくる

posted: mitsubako: 08:10AM

2006年02月14日

カーニバルのカージオイド

Category: お話あそび

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街や通りのいたるところにカーニバルがやって来た。
赤い声を出す人 赤い顔の人 赤いドレスの人 赤い仮面の人。
どこもかしこも酔いしれた人々の熱気でごったがえす。
赤と白のフリルがたくさんついた帽子の女の子がぼくのことを見ていた。
ぼくは女の子に笑いかけた。
女の子がぼくの方へ近づいて来てカージオイドの白い貝を見せてくれた。
「ハートの形?」ぼくが聞くと女の子は首を大きく横にふって「違うわ
心臓よ」と答えた。それからぼくの心臓にその貝を押し当てた。
ぼくの心臓の鼓動と女の子の脈打つ手首が微妙にずれてカージオイドは本物の
心臓のようにぴくぴくと動いた。

肌を露出して陽気にリズムを刻む女たちが押し寄せて来た。
そのうちの一人が女の子にぶつかる。
真っ白のカージオイドはぼくの心臓からすり落ちて地面の上で粉々に砕けた。
ぼくはかけらを拾おうと夢中になったけれど、次から次ぎへと押し寄せてくる
人波で遠ざかり、やがてかけらは踏み砕かれて見えなくなった。

もうそこに女の子の姿はなかった。
ぼくのカーニバルはいつの日よりも悲しい一日だった。

posted: mitsubako: 07:50AM

2006年02月10日

ガウチョのマテの時間

Category: お話あそび

この大地にはなにもない
太陽の光があたったとしても、草原に反射する色彩はわずかだ

ガウチョのナノはひとりぼっちで小屋に住んで獣から羊を守る番をする
隣のトタンの馬やに、四角く切り取られた入口からナノの白い馬が顔をのぞかせている
真っ黒な髪のナノは真っすぐな瞳と濃い眉でじっと止まったように凝視する
その目の奥にすべての自然の法則を透視する鋭い力が潜んでいる
野性と優しさに覆われた素朴な土地が生んだ人間臭い人間だ

3時になると荒い仕事から顔や手を真っ赤にしたガウチョが数人つどって、マテをすする時間になる

『あるいは たぐい希なき感性の投影…… 気づかぬ詩人へ』

posted: mitsubako: 08:36AM

2006年02月01日

東の蜜蜂の巣

Category: お話あそび

そして、分封を終えたみつばちは新たな巣をみつけて静まった
つかい古された蜜蜂の巣
長い時の経過の果てにさびた鉄のように物質と化す
その表皮はもろく、穴がいくつもあいていて、老朽に原形をとどめはしない
黒い蓮の花が朽ちたかのように
有機的でありながら、無機質なマテリアルは地へと落ちていく

東の蜜蜂の巣はもはやここにはない
やがてやってくる季節の幻影をただ印すためにそこに置きさられたのだった

posted: mitsubako: 07:21AM

2006年01月20日

プンタアレナス(Punta Arenas)

Category: お話あそび

南緯53度10分、砂の岬という名をもつ街プンタアレナス。
地球の反対側のマゼラン海峡から吹き荒れる潮風に、塗っても塗っても褪色をくりかえす家並がみえる。風化した錆びの味わいは、いつだって愁いを帯びてひっそりとしている。
開けられないカーテンの窓、継ぎ足されたトタン屋根、その先にぽつんと1本の電柱が立っている。
ここは人影のない、寂しい土地、人が恋しくなるところと風がささやいた。

『あるいは たぐい希なき感性の投影…… 気づかぬ詩人へ』

posted: mitsubako: 07:18AM

2005年12月15日

if this is a word

Category: お話あそび

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ことばってなんだろう……
文字ってなんだろう と ときどきおもうことがある…。

posted: mitsubako: 07:37AM

2005年12月14日

はかない宛先

Category: お話あそび

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dear anyone...

とおいとおい国に住んでいる人からクリスマスのご招待

街のあのカフェでホットチョコレートを飲みましょう
8つの笑顔に 8つの夢 そしてクリスティーナも一緒よ……

積まれた古い天体の本 埃まみれのタイプライター
さびた郵便ポストには 「はかなき住所」としるされていた

posted: mitsubako: 07:30AM

2005年12月13日

白い紙

Category: お話あそび

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posted: mitsubako: 07:27AM

2005年08月29日

キラの話し

Category: お話あそび

どろんとした大きな瞳。時々白目で見つめるよ。体の毛は白くて灰色のぶちがある。それがキラ。
キラは10年生きた。

ある日男はいつものように歌をくちずさんだ。
女は待っていて、男が歌を歌ってやって来るのが好きだから。
でも、この日だけはいつもとちがった。
「嬉しいわ!その歌、大好きよ」のかわりに、女の目から涙が溢れていつまでも止まらなかった。キラがいて、男と家族のように一緒に過ごした1年が蘇ってきたからだ。まるでその日々を詩にしたような歌だったから。
どうしても、どうしても女の涙は止まらず、鼻の頭が赤くなるまで泣いていた。

愛おしいもののために詩を歌い 今はもういないキラに涙。
ある国のある日常のできごと。

泣いても泣いても、もう帰ってはこない。
だけど愛したもののことを語ろうよ。

posted: mitsubako: 08:45AM

2005年07月31日

夕涼みの少女

Category: お話あそび

小さな家の二階の窓辺に女の子がよりそって涼んでいました。

なにをするでもなく、考えるのでもなく、窓辺の風にあたっているのがいちばん居心地がよかったからです。黙っていても天体は動いてくれて夕闇の線が消えたころ、いちばん星が出るからです。そうするとコウモリの目がときおり光ったり、近所の猫の目が輝いたり、虫が光りの跡を描いたりするからです。
やがて、窓辺に銀色の糸が一本するすると垂れてきて、ここにも慕情を隠せない一匹の蜘蛛が風に揺られています。
ぐんと辺りが静まりかえったころ、木陰の森のむこうの方にずん、ずん、ずんと昇る月が見えてきました。まんまるに満ちたひときわ大きな月の光につつまれて女の子はにっこり微笑んでなげキッスを送ります。

どこからともなく優しいギターの音が今晩はエリック・サティを運んできました。
“bravo!”女の子はそう呟きました。

posted: mitsubako: 18:46PM