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2005年05月04日

手書きのノートから 3日目

yokozawa_honey.jpg奥深い山の桜は、種類が異なるからなのか、そしてさらに、朝晩の気温差があるからなのか、ソメイヨシノの淡さよりずっとずっと色濃い。桜餅の薄皮みたいな、そんな色だ。奥畑・山代家族たちと、手づくりの散らし寿司を持ってすぐ近くの、丁度あの曲がり角の先の1本の桜の木の下でお花見をした。
ここにいると、道を覚える目印は樹木だったり、そばを流れる川幅だったり、突き出た岩だったりする。川井の駅からは、自転車で行かなくても、車で送迎もしてくれるのだが、私があえて、自転車を選ぶのには、歩くよりは速くて、それでいて体で通り過ぎた土地を感じることができるからだ。その方が旅先の土地の詳細にずっと触れることができる。人がいれば声をかけることもあるし、気に入ったところですぐに止まれるから魅力的だ。距離感もわかるし、標高差がある場合には、登りで気温が下がることも肌で感じることができる。土地勘が出てくると、もっとそこへ愛着も沸いたりする。

ずっと青空と早池峰の風に流れていく雲を見ながら昼時を過ごした。
山代さんと末川さんとで横沢という集落へ向かった。

私は、今回旅をする前に、川井はどんな村だろうとネットで調べていたら、すぐに岩手川井村養蜂日記というのが目に入った。横沢隆雄さんという方が、出身の集落の写真や文章を書かれているサイトだった。地元の養蜂シーンは蜜蜂に虜になっている私を震撼させた。「なんていう偶然だろう」私は、すぐ横沢さんにメールを書いて、養蜂園をお尋ねしたいとお願いした。横沢さんは、養蜂をされているのは父親であること、まだ春先でもしかすると蜜蜂はあまり活動していないかもしれないこと、横沢は何もない春だということを書いて来てくれた。
「じいさんも、ばあさんもそれほど遠慮の必要な人ではありませんので立ち寄ってみて下さい。」とあった。私は、横沢さんのことばとか、撮られている写真に強烈な印象を受けてどうしても、ここを訪れなければと思った。
自分の直感というものを信じられるだろうか。私は、ちょっとだけ自慢するとすれば、自分の直感はあることに関してはかなりピタリとくると思っている。私が求めているものには自然とこの直感が呼んで、ちゃんと出会わせてくれるから不思議だ。
こうして、私は本当に横沢さんのところへ行った。しばらく、日のあたる居間で横沢さんのお母さんと話しをした。にこにこと笑顔のやさしい目をした人だった。子どもの日も翌日なので、この地域の粽の作り方とかを聞いたりした。しばらくして、お母さんは湯飲みに一杯分のトチの蜂蜜を注いで勧めてくれた。まだ、蜜の採取もできない時期にこんな貴重な蜂蜜をたくさんにおもてなし下さって、嬉しいやら、恐縮するやらで、気持ちがどうかなってしまいそうだった。でも、本当に嬉しかった。だから、全部飲みほした。少し後味に酸味が残る深みのある山の蜂蜜だった。こんな味は生まれて初めて味わった。ニホンミツバチもいたそうだが、それは熊にやられてしまったと聞いた。私は、こんなおいしい蜂蜜が食べられる熊になりたいと思った。
yokozawa_bee.jpg横沢さんのお宅は小川の流れる斜面に建っている。すぐそばに、畑もある。もし、桃源郷というのがあるのならば、春のこの日のここはまさにそうだと私は思った。
お父さんが農作業から戻って来た。「蜂を見に来たのか」と言われ「蜂は刺すぞ」がその第一声だった。午後は蜂は機嫌が悪いとも言っていた。確かに、午前中の暖かい光の中で、少し蜜をもらって機嫌がいい時の方が急激に冷えてくる午後よりは良かったかもしれないと思った。それでも、養蜂用の帽子を出して来てくれて、被って、手もできるだけ袖口を組んで隠すようにと言って蜂箱の方へ案内してくれた。私は、普段から蜂を観察しているし、今まで刺されると思ったことはなかったので、ちょっと気をゆるし気味で中へ入って行った。あっという間に横沢さんは、蜂箱を素手で開けて、中を見せてくれた。蜂は顔の回りにぶんぶんと飛んでくるし、勢いがいくらか勇ましいと感じた。環境によって蜂の性格はちがうかもしれないとこの時すぐに思って、私はあなどれないと思い少し気をつけながら蜂を観察した。いつも見ている西洋みつばちよりも、体が少し黒いと思った。体毛ももっとふさふさしているように感じた。
新緑の大木の前に午後の光が射す中を風にも負けず飛びかう蜜蜂は勇敢だと思った。そして、こんな光景は何時間でも見ていられると思った。

横沢さんと記念撮影をした。こうして蜂を飼う人は私にとって今何よりも尊敬できる人生の大先輩だと思うからとてもとても光栄だった。
私が、日頃観察をさせてもらっている養蜂家は「蜂は刺さない」と言う。横沢さんは「蜂は刺すぞ」と言う。このどちらも私は本当でどちらにも、長年飼って来た蜜蜂との哲学があることばだと思う。

息子さんである横沢隆雄さんの岩手川井村養蜂日記は力強い写真がたくさん載っている。そして、隆雄さんは、今何十年計画で、山に植樹をされているそうだ。それは、いづれ、花をつけ開花した頃に、蜜蜂が蜜を採りにやってくるために……。

かけがいのない出会いの機会を心から感謝しています。ありがとうございます。
そしてお元気で今年も養蜂の仕事を続けてください。

posted: mitsubako at <12:26PM>

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