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2008年03月03日

秋田雪見たび その8

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『ノンちゃん雲に乗る』で知られる石井桃子さんの回想録『幼ものがたり』を読んでいる。桃子さんってどんな人だったんだろうと想像をふくらませて読んでいたら、四季折々という章で「雪の日」を綴った思い出が描かれていた。わたしの秋田雪見たびに重なる気持ちが描かれていた。——縁側に腰かけ、足をぶらぶらさせながら、目の前の光り輝く世界に我を忘れて見いっていたということである。——「雪の翌日は晴れ」、「雪のあした、はだか虫の先たく」。桃子さんは幼い時の体験から大人になってはじめて知ることばに、意味は調べなくとも直感的にわかることがあると結んでいる。
秋田の雪見たびは、丁度そんな「虫の先たく」日よりに恵まれた晴天だった。わたしの心に積もったほこりを雪にさらして、真っ白く先たくされたたびだった。雪見たびのおしまいにおみやげ写真を残しておこう。

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ちなみに、辞書で調べてみた。
はだか虫の洗濯(はだかむしのせんたく):【意味】雪の降った日の翌日は晴れ渡る、という天気ことわざ。

posted: mitsubako: 18:38PM | comments (1)

2008年03月02日

秋田雪見たび その7

五城目の町を散策している時に出会った自転車のおばさんが勧めてくれた村へ朝市のあと立ち寄ることにした。五城目町の中心から20分ほど奥に入った村は雪がさらに深くなる。時間的に交通手段はタクシー以外にむずかしくなったので八郎潟駅前から湯の越温泉まで乗ってみることにした。タクシーの運転手さんはこんな季節はづれのお客さんに大喜びで「ありがとう、ありがとう、助かったわぁ」を連発する。八郎潟駅からすぐのところにある和菓子屋「畠栄」のあんごま餅が名物でおばあさんの手作りだと教えてくれたので、立ち寄ってからの出発となった。湯の越温泉付近の村を散策してから温泉へ。温泉が特に大好きなわけでもなかったが、寒い地方での旅のコツはちょっとでもあたたまるために温泉につかることだと思う。都心で「お茶をする」感覚のように「温泉をする」方が土地にあっているように思うのだ。湯の越温泉の湯は硫黄臭が強く感じた。地元の方たちが圧倒的に利用をしている温泉で、気持ちの良い泉質だった。最後の秋田の晩餐はすずらん通りにある「芝良久」という店になった。カウンターでおいしいお酒と季節の肴をいただいていい気分になった。

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最終日の朝は秋田の名所角館へ向かった。残念ながら雪の中の武家屋敷はそれほどぐっとくるものがなく、観光地として整備された感がわたしをそれほど惹き付けなかった。それでも「文中」で稲庭うどんをすすり、「安藤醸造元」にも立寄り、屋敷の中を見学した。奥の間に雛人形が飾られていて、はじめて江戸期の押絵雛というものを見た。平面的な押絵のつくりなのに、立たせることで立体感がある不思議な人形群だ。人々が真夜中に寝静まったころ、人形たちが賑やかな宴をはじめそうな気じがして思わずクスリと笑った。趣味とはほど遠い華やかな人形の写真も一応記録に残しておこう。角館はおそらく桜のころが雅なのだろうと思う。せっかく来たので普通の民家を見て歩いていたら近代建築にであった。「伊保商店」という雑貨屋だった。店舗の中はレトロなものが雑然と置かれていてそれほど珍しいものが陳列されているわけではない。ただ、武家屋敷の整然とした空気にそぐわないこの存在がおもしろいなと思った。しばらくしてから角館納豆を買いに河原の方へと向かった。そうこうしている間に、東京へ向かう列車の時刻が近づいてきた。

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posted: mitsubako: 17:11PM

2008年02月24日

秋田雪見たび その6

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秋田に来てまずはひなびた温泉街でのんびりした翌日は朝市へ行くことにした。男鹿半島へ行く手前の追分から北上する奥羽本線で八郎潟という駅で降りた。途中の車窓は雪の平原ばかりだった。単調な風景が精神にもたらす影響は深い深呼吸のようなやすらぎだった。
八郎潟の駅からバスに10分ほど揺られて着いたのが五城目という町だった。高知の朝市に比べると寂しいものだが市通りを何度も往復するうちにお店のばあちゃん、じいちゃんたちとすっかり顔なじみになって会話がはずんだ。料理の仕方を聞けばなんでも親切に教えてくれる。かならずおまけをくれて荷物がどんどんかさばってくる。

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市場は、地元で採れる野菜も少しはある。ただ、時期的には山菜の頃ときのこの頃がいいと教えてくれた。新鮮な魚介もあるがそのほとんどは北海道からのものだ。八郎潟でとれるアミを発酵させた塩辛は調味料として地元ではおなじみのものらしかった。しょっつるは汁もののだしとしてどれほど重宝なものなのかは、旅から戻って気がついた。こういうものは地元の市場で売っているものの方がスタンダード化されていない台所の味を直接味わうことができる。春の山菜の時期にもう一度行ってみたいと実は思っている。
ひととおり買い物を済ませた後は、町を無目的に歩いて回った。

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posted: mitsubako: 20:45PM

秋田雪見たび その5

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乳頭温泉郷は隣接した温泉が6軒ほどある。そのうち5軒は歩いて回れる範囲だった。こうなったら5軒制覇を考えたのだが、孫六温泉の魅力にとりつかれてずいぶんとのんびりしたので、その後は蟹場温泉、大釜温泉を巡った。妙乃湯温泉は時間の都合で、黒湯温泉は冬季は休業とあって残念ながら入れなかった。大釜の酸性質の湯も私は気に入った。このところ何度も書いている猪谷六合雄の雪に生きる暮らしの中で温泉の活用がすばらしく、旅のおかげでより現実的に書かれている内容が理解できた。千島で立てた第一の小屋の風呂場と洗濯場はガラス張りで明朗快活。かつ、機能美と合理性に富んでいる。猪谷についてはまたいつか書き留めておきたいと思う。
冬山の風情を満喫した私は翌日のプランに悩んでいた。候補はいくらでも浮かぶのだが、冬の交通事情を考えると行かれる範囲は時刻表とのにらめっこだった。

posted: mitsubako: 11:23AM

2008年02月22日

秋田雪見たび その4

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初めての冬の湯治場は思い描いていた風景そのものだった。いや、それ以上だった。屋根から地上に突き刺すつららは冬の象徴だと思っていたが、春に向かう兆しなのだということに気がついた。つららを無性にこの目で見たかったわけは、自然と重力が織りなす仕事の結晶だったからなのかもしれない。
朝の温泉は古ぼけた小屋のすきまから差し込む光りが美しく夢のようだった。裸のまんま思わずカメラを向けた。

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posted: mitsubako: 23:14PM

2008年02月18日

秋田雪見たび その3

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秋田のたびに出る数日前あたりから猪谷六合雄の『定本 雪に生きる』を読んでいた。ちょっとした小屋を見ると猪谷スタイルを思い浮かべ楽しくなった。二日目は早起きをして秋田市民市場をのぞいた。雪解けを待たずに摘んだ「ひろっこ」と呼ぶあさつきが春の緑を早々と知らせてくれていた。短い時間を市場で過ごしてからフリー切符を片手に田沢湖行きの列車に乗った。田沢湖駅からバスにゆられて40分、わたしは乳頭温泉郷にやって来た。雪は朝日にきらきらと輝いていて、どっちを向いても真白な風景にすっかりうかれ気分。それから孫六温泉に向かって約20分ほどの雪道を散策しながらゆっくりと登っていった。小さな木橋を渡って、小高い雪丘の向こうにひなびた湯治場が見えて来た瞬間、感嘆の声をあげた。見たいと思っていたものが、思っていた以上の条件下にこうして出会えたとは。深い雪の山奥でこうして温泉場を開いた人に畏敬の念が沸きおこってくる。
がらんとした湯治場の玄関で「こんにちは」と大きな声で何度も声をかける。やっと奥から老婆が出て来て、今はわたしたちしかいないので好きなようにどこでも入っていいよと告げられ、朝から温泉につかることになった。

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posted: mitsubako: 22:36PM

2008年02月17日

秋田雪見たび その2

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大曲を過ぎたあたりから雪は本格的になった。たびのあいだ連日吹雪いていたらどうなるだろうかと心配する気持ちをよそに、秋田に近づくにつれて夕方の青空が見えてきた。
秋田駅を降りたのはもう5時を過ぎていた。都市の駅前はどこもあまり変わらない。ジュンク堂があったりTower Recordがあったりとわたしが住んでいる町よりも便利な駅ビルでにぎわっている。人が少ないだけが東京とは違う。これから3日間秋田を拠点に行く先を決めて村を巡る。ためしにジュンク堂で秋田の出版社の本を眺めることにした。『稲庭うどん物語』無明社出版『秋田郷味風土記』秋田県農山漁村生活研究グループ協議会『秋田の湯っこ』秋田魁新報社の本を買った。そのほかにも五能線などおもしろそうな本が陳列されていた。
夜は会社の同僚に教えてもらっていた北洲に凍る夜道を歩いて向かった。日本酒とぎばさ、きりたんぽ田楽、しょっつる鍋など秋田の味をあじわった。
はるばる列車に乗り込んで、こうして郷土料理を口にするだけでも未知の土地への好奇心がじわじわと高まってくる。いいたびになりそうな予感と期待で嬉しくなったわたしはほろよい気分で頬がぽっとほてっていた。

posted: mitsubako: 18:54PM | comments (1)

2008年02月12日

秋田雪見たび その1

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秋田へ雪を見に行った。行きの東北新幹線こまちで盛岡を通過したあたりから雪景色が本格的になる。
車窓に映る山を見ながら、岩手で出会ったたくさんの方々は元気にされているだろうかと心の中にあついものがこみあげてきた。雪の盛岡で感嘆の声をあげていた雪見たびはまだほんの序の口だった。

posted: mitsubako: 22:26PM