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2008年10月05日
星の牧場

岩手で馬と暮らしている友人が引っ越しをして新たなスタートをするというメールをもらってからしばらく経った。どうしているかと思って、いったん休止しているはずのblogをのぞいてみたら新しくなっていた。そんな思いにさせてくれたのは、中学校の図書館の先生がすすめてくれて以来、心に残る一冊「星の牧場」を読み返したからだった。長新太の作品集をぱらぱら開いていて、ふと目にとまったのがブルーのツキスミという名前の馬の装丁の童話だった。この挿画が長さんだったのかとあらためて知ると、夜中だのにいてもたってもいられなくなって天井うらの本棚から「星の牧場」を見つけ出してきて読みはじめた。舞台は第二次世界大戦後。インドシナ半島に戦争で招集された青年兵が、世話係をした馬のツキスミと悲しい別れをして戦地から帰って来たところからはじまる。育った牧場に無事帰還はできたものの出征前とは大きく変わり、心に傷を受け「ツキスミの幻聴」が聴こえるようになったモミイチ。牧場生活で夢と現実のなかを往き来し、空想の世界でジプシーたちと音楽をかなで心あたたまる交流をしながら、最後にツキスミと星の牧場で再会をするお話。このお話のハチカイの存在がずっとわたしの中に知らないあいだに住み着いていたことがよくわかる。若い時に心をうごかされたファンタジーは人生に大きく影響をするものだとつくづく思う。自由とはなにか、平和とはなにか。誰かにそれを求めるのではなくてわたしがそう在ることが、この本を読んでいるとよくわかってくる。いとおしい命の尊さとか儚さはひとりで自然と対峙したときに霧の先に見えてくるんだと思う。
posted: mitsubako: on 18:36PM | comments (5)
2008年10月03日
米田知子「終わりは始まり」

なんの変哲もないどこかの国の風景。静かに時間が止まったままの部屋。写真によって切りとられた場所や時に、もはや何か意味が含まれているのだろうか。
だのに、米田知子が撮りおろした一見なんでもないようなシーンにわたしは引きこまれていく。
品川から徒歩約10分ぐらいの御殿山ガーデンにある原美術館で、米田知子展が11月30日まで開催されている。米田といえば「見えるものと見えないもののあいだ」は代表作のひとつでもありよく知られている。ブレヒト、谷崎潤一郎、マハトマ・ガンジーなど著名人たちの使った眼鏡を通して、彼らとかかわりのあるテキストをクローズアップして撮影した写真だ。文頭に「なんの変哲もない…」とは言ったものの、実際は人類が歴史的に受けた大きな傷跡を残した土地や政治的なメッセージが「現在」というフィルターを通してなげかけられてくるのが彼女の風景写真群だ。彼女が意図的にそうしているような、故意な狙いはまったく感じられない。そっけないタイトルキャプションを見た時、はじめてその風景にあらたな価値感がこちら側からわきたってくるのだ。それを米田の冷静な目線と言えばいいのか、それとも単純に写真の持つ客観性なのか。今回は、一連の「見えるものと見えないもののあいだ」のほかに新作として「パラレル・ライフ ゾルゲを中心とする国際謀報団密会場所」が発表されている。古くなってレンズが汚れきったブローニーカメラで撮影したものだという。レンズは古くなっても空気感を映し出す装置だとあらためて感じる。米田の個性が原美術館の雰囲気ととてもよくあった展覧会だと思う。
*米田知子展「終わりは始まり」2008年9月12日(金)-11月30日(日)まで 詳しくは原美術館のサイトをご覧ください。



posted: mitsubako: on 17:23PM