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2008年05月04日

客間の主人 澁澤龍彦

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神奈川近代文学館で澁澤龍彦回顧展 ここちよいサロンを開催している。
私は『ヨーロッパの乳房』を読んでボマルツォ庭園の存在を知ったのが、そもそもの澁澤のはじまりだった。幻想に満ち偏愛主義的なイメージが強い澁澤にはなにかが立ちはだかっていて、むしろなかなか読書に入り込めずにいた。にもかかわらず、気にかかる人物のひとりで、いつか必ず読む時がくることも予めわかっているつもりだった。おそらく、詩人で元妻だった矢川澄子の方から澁澤を見ていたから、女性的な感情がわたしの中に無意識に働いて、作品をその事実とは別に切り離して客観的に見ることができなかったからなのかもしれない。それぐらいわたしには澁澤の存在と彼女の最期が衝撃であったのだ。
ここちよいサロンの監修は詩人の高橋陸郎だった。生前の澁澤の生き方をサロン=客間の主人とたとえ、主人を媒介に芸術や思想に心を通わせる文化人が多岐にわたって、その主人(あるじ)を慕い集った。客間を巡り回想する趣向がこらされている。以前、『舞踏会の手帳』というクラシック映画があったが、故人を回想しながら客人として自分もサロンに招き入れられている気持ちで澁澤を知っていく感があった。
澁澤の本はとくに後期のものがおもしろいと人から勧められている。『ねむり姫』、『うつろ舟』、『高丘親王航海記』など身体的に澁澤が不調を感じはじめてから病床で死を迎えるまでの作品群だ。
幼少の頃も病弱で、植物や昆虫などミクロコスモスな世界観と対話をしていた澁澤にやや好感を持ちはじめる。澁澤がサロンを開き日夜、文学や芸術論に花を咲かせていた場所は鎌倉の山ノ内。ひょっとすると母の実家のすぐそばだった。
まもなくパリ時代の堀内誠一とかわした89通の往復書簡が晶文社より出版される。春の終わりから不透明な視界がつづく梅雨の季節、幻想の澁澤の世界にひたってみようかと思っている。

posted: mitsubako at <15:17PM>

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