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2006年06月01日

薄暗さの先に

谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』を読んでいる。
ずいぶん若い頃にいくつかの谷崎文学には触れたものの、随筆はこれがはじめてになる。
写真に興味を持つようになって「暗さ」ということをあれこれ考えているうちに読んでみたくなった。もちろん、タイマグラをはじめとして、このごろ訪れてみたくなる日本の残された生活空間にも影響されているのは間違いない。
古い日本家屋は室内が薄暗いことが多い。文化財などの茅葺屋根の住居や、寺院などに訪れると、室内の薄暗さに目が慣れるのに時間がかかる経験をすることは多いであろう。
せっかく据え付けられた室内の調度品もよく見えないではないかと思ったりするが…。

日本の料理は食ふものでなくて見るものだと云はれるが、かう云ふ場合、私は見るものである以上に瞑想するものであると云う。さうしてそれは、闇にまたたく蝋燭の灯と漆の器とが合奏する無言の音楽の作用なのである。

なるほど谷崎のことばに吸い込まれていくと薄暗さにこそ控えめに深さを見せる数々の日本の感性を再認識できる。やっとこうした感性の世界が見えるようになってきた時、運よくめぐりあった随筆だ。
はかり知れない手仕事や感覚の世界をもったところに生まれでたわたしは恵まれていると思えたし、少しでもその感覚を自分のものにできたらなんて欲が湧いてくるのだ。

posted: mitsubako at <07:30AM>