エンサイクロペディア・シネマトグラフィカで養蜂のフィルムを見た

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今週の木曜日の夕方は、Space&Cafeポレポレ坐(東京・東中野)で催された「養蜂」のフィルム上映会に行きました。前半はドイツ北部で行われていた編みかごの巣(スケップ)による養蜂と採蜜の様子、後半は福島の阿武隈山地で行われている日本ミツバチの養蜂が上映されました。ゲストトークに 佐治靖さん(民俗学・人類学 / 福島県立博物館)と中村純さん(養蜂学 / 玉川大学ミツバチ科学研究センター)を交えた楽しい会でした。

上映したフィルムタイトル

前半
養蜂場の仕事(1978‐1979年撮影)
「巣別れ前の作業(藁で編んだ巣の用意など)」/14'00"
「巣別れ時の作業」/12'00"/
「蜜の採集」/13'00"
「エンサイクロペディア・シネマトグラフィカ」(ECフィルム)
ドイツ北西部より

後半
福島県阿武隈山地のニホンミツバチの養蜂に関する調査映像
「分蜂群の捕獲・収容」/「採蜜作業」など
おまけとして、タイの民家に置かれた巣箱

エンサイクロペディア・シネマトグラフィカは1951年に西ドイツの国立科学映画研究所のG.ウォルフ教授の提唱で創設されたそうです。ウォルフは過剰な演出や解説、BGMを徹底的に避け、映像を比較により体系化することを目指しました。その手法が20世紀の民族誌映画の原型のひとつのになったとも言われます。アーカイブは研究者やカメラマンが世界各地に赴いて収録し、約2000タイトルに及ぶそうです。生物学や民族学をはじめとした多彩な分野にわたる貴重な映像資料です。設立後、ECは各国の機関に渡り、日本は1970年より下中記念財団が映像の管理・運用をされているそうです。残念なことに本家のド イツは、組織が解散し、日本も長らく上映が途絶えていましたが、ポレポレ坐の連続上映会で継続的に上映を復活させています。
養蜂に関心を持つと、巣箱にも興味を抱く人は多いでしょう。わたしもそのうちの一人です。巣箱にはその人固有のアイディアもあれば、地域文化や風土、気候を取り入れた結果が形になって表れていることがあります。巣箱に使用する素材が地元に生えている樹木や草だったり、入口や屋根の形はその土地の地形や雨風の状況、天敵に応じて変化が加えられます。みつばちの過ごしやすさに焦点をしぼって考慮した巣箱もあれば、装飾を加えた一種の家具的な扱いのものまであることに驚かされます。巣箱一つからその人がどう養蜂とかかわっているか、その背後にどんな暮らしがあるのか、暮らしを支えるそこの自然はどんな所なのかなどと好奇心でいっぱいになります。
みつばちの存在はその生態のみにとどまらず、文化や社会などの境界を超えて、わたしたちに球体のような感覚で物事が見えてくるようにしてくれると感じます。
中村純先生のお話の中にあったように、みつばちが点、もしくは点と点をつなぐ媒介者なのかもしれませんが、様々な事象の連続性のどこか1点にみつばちの存在があるのだろうと思います。そうでないと、レオ・レオニがテラリウムの中の宇宙観を嘆いたように、自然界にある部分を切り取って所有することに意義を持ってしまうからです。
福島の阿武隈山に近い村落の方々が、仮設住宅から自宅に戻られた時、これまでの慣習で日本みつばちの巣箱を置いていた人たちが、もっと先にすることがあるはずだろうに、帰ってすぐみつばちの巣箱の設置をしたというお話に心が打たれました。それだけみつばちがその方々の暮らしの一部であることがよくわかりました。家畜でもなく、生業のわけでもないのに、半分趣味のようでいて、ほとんど飼うというより自然におまかせする養蜂のスタイルは「家畜以前」としてとても面白い関係性だと思います。そして日本人の自然観のようなものが、そこによく現れているように思います。
今回のフィルム比較では、伝統的な西洋みつばちの養蜂が、日本の日本みつばちの養蜂と類似点が多いことに驚きました。西洋みつばちと東洋みつばちはとても性質が異なると感じていますが、巣かごの中に自然巣を支えるためのクロス棒を差し込むとか、底から中の様子を確認するとか飼い方にこれほど共通点があることにむしろ関心しました。ちなみにわたしの家にある未使用のスケップは底も藁で編んであって、上部のかごと底が一カ所で蝶番のように留めてあります。上部が開閉できる手かごになっています。
もう一つ、とても大切なお話がありました。わたしはTedxtokyoで「はちのこと」のお話を書きましたが、少し変更を加えた方がよさそうです。それは、8のダンスのことです。このダンスは主に蜜源を見つけた時に行われると一般的には言われていますが、どうやら分封する時の場所選びにも使われていて、むしろその時の方がこのことばは有効的だそうです。偵察蜂が分封して行く先の条件を巣内の蜂たちに知らせ、日本みつばちの場合は分封前からかなり調査を行っていて、その候補地があれこれと出てきて大多数の蜂が納得するまでに少し時間がかかるようです。最終的には多数決で決定がなされているようです。西洋ミツバチの場合は、分封してから場所の選択や決定をするそうです。そこで中村先生がお話された言葉が印象的でした。
蜜源を見つけて蜜を持ち帰るのは、みつばちの個々の能力と自由に意外とまかされている。みつばちは社会性が強くて一致団結をいつもしているかのように表現されることが多いけれど、実はわりに勝手気ままな行動をしていながらも、全体にはバランスがとれている。あの統率がとれた社会性とは個々の長けた能力によるものだと......。
これを聞いてますますみつばちの個の持つ力、ユニークさに感動した夕べでした。

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