Brooklynの養蜂家 Kelly York

|

07_DSC3339.jpg

昨年の9月、BrooklynのKellyを訪ねてから4カ月が過ぎた。Honey FestivalやBrooklyn GrangeとMeg Paskaの農場を目的に、都市の養蜂や自然再生プロジェクトを見学した。Kellyと画家の夫Zaneと最後の夜にHill Sideというレストランで食事をした。わたしたちは少しほろ酔い気分でバーへ行ったりした。彼女の友人たちと合流したその店で、Kellyはバッグごと盗難にあってしまった。真夜中、わたしたちは銀行から携帯、会社のIDなどすべてのキャンセルや追跡に追われた。幸い、数千円をカード払いで利用されてしまった以外、金銭的な大きな損失はなかった。しかし、その損害よりも帰国前日を楽しい思い出でわたしを送り出したかった彼女の心遣いを台無しにしたこの事件にKellyは腹を立て、涙にあけくれていた。仮眠もままならないまま翌朝を迎えた。
その朝は彼女の蜂の巣箱を見るのが滞在中の最後のイベントだった。PETER PAN Donut & Pastry Shopで朝食をすませ、何ブロックか歩いてGreepointに置かれている彼女の蜂箱を見た。Kellyは自分の住むアパートに蜂の箱を置く裏庭がないので、巣箱を置かせてもらうホストファミリを探した。運良く、蜂の世話はしないけれど、蜂箱を置いてみたい人が見つかって、条件がすべてととのった。
彼女は今、全部で3箱を管理している。週末に自転車でやって来てみつばちの健康状態を見ている。Kellyは蜂蜜をすべて採蜜してしまわず、花蜜の少ない時期に備えて砂糖水などの人工餌ではなく、100%蜂蜜でみつばちを飼うために保存しいる。趣味養蜂は蜂蜜を売ることが目的ではないので、こうした方法がとれる。みつばちにとっても自然なことで、わたしも飼うとしたら同じ方法をとりたいと思っている。Kellyは慎重にまるで神聖な儀式のようにゆっくりゆっくり蜂箱をはずし、丁寧にみつばちを検診しては、わたしにもみつばちを見せてくれた。都市で養蜂をはじめて3年、KellyのはちみつはBrooklynでYellow Queenというブランド名で知られている。多忙な仕事をしながら、自分のできる範囲での養蜂を試みるのは都市生活でのある種の養蜂スタイルだと思う。みつばちを飼う者同士が1カ月に1回ミーティングをしてBrooklynにみつばちを媒介としたコミュニティが息づきはじめている。
昨夜の悪夢は自ずと癒され、JFKに向かう直前に新鮮な朝を迎えられたわたしは、満ちたりた気持ちでいっぱいだった。みつばちはペットのように近づくことはできない。養蜂家は慎重で冷静な気持ちになることを強いられ、みつばちとの間に適度な距離間がうまれる。こうしたある種の緊張感と花蜜や蜜蝋、燻煙器から薫るスモークに神聖な場が立ちあらわれるのかもしれない。一週間という短い滞在で盛沢山の体験をし、吸収したいことで頭がいっぱいになった。気候も住宅事情も、文化的な背景や人の感性も大きく異なるが、みつばちによせる思いは共通していて、そこからわたしたちは溢れるばかりの創造の場を与えられている。

01_DSC3318.jpg

Kelly Yorkの養蜂の様子のアルバムです