香港のみつばちに会いに・みつばちを飼う友人たちと

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Michaelが飼うアジア種のみつばちは小柄でかわいい

みつばちの世界に魅せられて、養蜂をはじめた人とならことばや国を越えて、心の底で確かなつながりをすぐに持つことができるような気がしている。ひとつそこに共通した生きる哲学が流れていると思うからだ。
4月下旬から5月のはじめ、香港在住のMichael Leung、ブルックリン在住のKelly Yorkと香港で会い、Michaelの案内でわたし達はゆかいなみつばちツアーをした。
Michael Leungは若くして、HK HONEYとHK FARMを主宰するクリエイティブディレクターだ。香港の街中は新旧の建築が入り混ざった雑居ビルが、まるで蜂の巣のように密集している。雑然としたこの都市空間の屋上を利用して、みつばちを飼うことと主に菜園中心とした緑化をプロジェクトとして立ち上げているのがMichaelだ。コミュニティのデザインの傍ら、国内外からの取材は、インターネット、テレビ、雑誌をはじめ様々なオファーに応じている。週末は養蜂やみつばちを飼うことから見えてくる環境問題について、あるいは蜜蝋のろうそく作りなどのテーマでワークショップを開き、自らも郊外の農園にパーマカルチャーの勉強をしに足を運ぶ多忙な日々を送っている。スリムに保つ体型からも、そのフットワークの軽さを察することができる。明晰な頭脳、繊細な心、必要最小限の暮らしぶりと、なにより人なつっこい元気な笑顔で行動する姿が人を惹きつける。わたしの短い滞在期間にあわせて、馬寶寶(粉嶺北馬屎埔村)の有機農園にある2カ所の養蜂家と錦上路站駅(Kam Sheung Road)から高埔新村の養蜂家を訪ねる旅をした。どちらの村落も幹線道路をひとつ越えると新興住宅の高層ビル群がそびえ立ち、そのコントラストに驚くばかりだった。急速に進む都市化の波は、あと数年もしないうちに、こののどかな田園地帯を消してしまうのではないかと感じた。
Michaelは香港市内とこうした郊外の地元の農民たちを結び、様々な環境に共生するものたちのコミュニケーションの場をデザインしている。「持続可能な社会」ということばが聞かれるようになってから、日本ではだいぶ年月が過ぎて行った。人々はうっすらと危機を感じつつも、まだ大丈夫と見て見ぬふりをしていた矢先に震災がおき、原子力発電所の大事故が起こり、ようやく都心でも「持続可能」という現実をつきつけられることになった。もちろん、わたし自身が身に迫る思いで、小さな声を上げずにはおれない状況になったのだ。
バナナやライチの木々がしげる鮮明な緑の地を歩いていると、聞いたことのないような美しい鳥の声や、見たはずもないのにどこか郷愁を感じる風景に懐かしさで胸がいっぱいになるのはどうしてなのだろう。MichaelとKellyは移動中の車中でわたしの養蜂計画を「こうしたら?」「そうだこんなこともできるよ」とあれこれまるで自分の夢のように一緒に考えてくれた。わたしのなかでしばらく眠っていたバイタリティをぐっと引き出してもらったような気がしている。今年はもうひとつ、外へ向かいたい夢を実現したい。そしていよいよ、きっとわたしの庭にもひとつかふたつ、蜂箱を置く日が必ずやってくると予感している。香港、ニューヨーク、横浜。はるかかなたの屋根の上の羽音は地球のどこかで共鳴し、ささやきのようなアクションを起こしていくことだろう。

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左からMichael、わたし、Kelly

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馬寶寶有機農園の入口のサイン

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蜂とはちみつと米をあわせてお酒まで作る養蜂園

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イタリアン種を飼う養蜂園

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都市化が迫るこの地での養蜂はいったいいつまで続けられるのだろう

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Mr.Manの養蜂園は桃源郷のようだった

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この養蜂園で初めてみつばちに刺される。みんなから養蜂家になる儀式だと言われた

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Michaelが築いている屋上の養蜂園は都市部と村落を結ぶ場でもある

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みつばちが眠りについても夜遅くまでわたしたちはみつばちをめぐる夢をわかちあった