緑のいちじくと枇杷

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爽やかな5月の週末。5、6年前に植えた食べ種の枇杷は2本とも立派に庭で成長して、今では1階の屋根ほどの高さになった。福島の原子力発電所の事故後も何の変わりもなく庭仕事をし続けている年老いた父を見ていると、彼にとっての生活は彼のサイクルでしかないのだろうと思う。ご年配の方々が突然避難のために移住を迫られた場合は、納得してもらうために家族の方々は大変な苦労だろう。年齢に関係なく、住み慣れた土地を離れることはつらいのだろうが、年を重ねるごとに新しい環境に対応するのは難しくなっていく。しかも、「もうこの年なんだから、何があったっていい」という覚悟があるから、なかなか耳を傾けてはくれないだろう。もし、私が避難を命ぜられたら、どんな対応をこの父に向かってするのだろうか。このまま、いつもと変わらず土をいじり、庭木の剪定や移植を楽しんでいた方が幸せそうに見える。
庭のいちじくに今年も緑色の実がなった。太陽の光りを浴びて、緑がひときわ目を引く。若く新鮮な輝きに見とれていると、枇杷にもはじめて実がなったことを父が知らせてくれた。1本の木は確かにしっかりと実をつけていた。おめでとう、この春に。だけどこの春に。生まれてきたものへ、120%で祝福できない出きごとが起きてしまった。木々によせる感情までがあの日を境にまるで変わったことをわたしに気づかせてくれた。