ほのかにかおる土の思い出 From Orchards, Fields, and Gardens

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そもそもわたしがみつばちをとても好きなのは、幼少期の体験にあるのだろうか。育ったところは都会だったけれど、小さな野原が点在する町だった。春にはおたまじゃくしを見つけたり、夏には小くわがたもつかまえることができた。秋には赤とんぼを追いかけ、冬には越冬中のかまきりのたまごも観察できた。考えてみれば今風のガーデンにはほど遠いが、雑草と雑木が混在する庭がいつもそばにあった。ひとりで、友だちを呼んで、初めて飼った子犬ともこの庭で遊んだ。家の窓から庭を眺めることは毎日の日課だった。今、わたしには小さな夢がある。少しづつ植えている果樹が日陰をつくるぐらいに育ったころ、二箱ほどの蜂箱を置いて、その庭でみつばちを飼いたい。わたしはそれを眺めて考えること、思うことを描いたり書いたりしたい。小さな神秘に心をよせてことばの世界をつなげるためにはみつばちの木箱しかないと思えるからだ。
From Orchards, Fields, and Gardens
Art and rememberings celebrating sustainable agriculture and good foodというかわいらしい本が先週届いた。11人の書き手と写真やイラストを21人のアーティストでまとめた本だ。編者はKerstin Svendsenでサンフランシスコ在住のグラフィックデザイナーだ。大農業の仕組みを見つめ直し、小規模で多様な農業を人々にもっと身近に体感できるための支援プログラム活動をおこなっている。
書き手は自分たちがそれぞれに過ごした幼少期の庭や果樹園を回想し、その記憶を綴っている。植えられた木に登って遊んだこと、みつばちにはじめて刺されて以来、虫嫌いになったこと、家族が育てていた家庭菜園のやさいのこと......。大人になりやがて一度は家族と離れて暮らし、忘れてしまった土、昆虫、草木、そして果樹。それらのほのかな香りが記憶とともに呼び戻され、ふたたび人はこの小さな営みを思い出し手を動かしはじめる。こんな小さなことが、人をもう一度土とつながる暮らしへ向かわせてくれる。他者の思い出なのに読んでいるうちに郷愁の思いがわいてきて、食物を育てたり、収穫する喜びがわたしのなかへ伝わってくる。大切なことはこんな小さな行動からはじまるのだと思う。

ほんの1ページですが、みつばちの記憶飛行を撮影した写真を依頼されて提供しました。こんな形で協力できたことをとても嬉しく思っています。
詳しくはこちらのサイトをご覧ください。