みつばちはりんごの花から花へ

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「2本のリンゴの木」という本がある。須坂のりんご園で人の手入れをした52号と手をいれずに放置したゼロ号と、名づけられたりんごの木の観察記だ。幼児から楽しめる本で、りんごをモチーフにした絵本と一緒に本棚の目につくところにしまっている。昨年の4月なかごろ、友人からあんず畑に置かれたみつばちの木箱の写真が送られてきた。今年は自分の足で行こうと思っていたのだが、すっかり時期をいっしてしまった。それならりんごの花を見に行こうと青空の5月、長野県の伊那地方にある松川町へ向かった。南アルプス連邦を目前に桃、さくらんぼ、梨、ぶどう、りんごの果樹園が盆地に広がる。まさにフルーツパラダイスだ。中央線沿線は新緑と山桜がまだ残っていて、早春のやさしい色彩に包まれていた。澄みわたる空にわずかな残雪が白く映えるアルプスを眺めながら、雪景色のころ同じ路線から見た車窓を思い返していた。東京から2時間半、列車にとび乗ればこうした自然のなかにすぐ囲まれるのだからもっと頻繁に通いたい。都会の日々に追われまくってため息ばかりついていないで深呼吸を、散策、そして大好きなみつばちをさがしに!
松川インターから10分もしないところに果樹園は隣接している。人影もなく静まり返ったこの場所は実在する桃源郷のようだ。りんごの花は2分咲きぐらいになっていた。やがてなる実の色のように赤いつぼみ。開花すれば薄桃色からうっすらと白い花びらに変わっていく。降りそそぐ太陽に紫外線防止なんて言ってはいられない。空に向かって「わたしはたくさん光りを浴びたい」と手をひろげたくなる。足元には大きくて真っ黄色のタンポポやオオイヌフグリなどが咲いている。花咲くりんご林のなかを歩きたいだけ歩いた。幻想的な気分にひたった。頭上でたくさんのみつばちが羽をふるわせてバスケットいっぱいに花粉だんごをつけて飛んでいく姿を何時間も眺めてすごした。こうしているだけでどんどん元気な自分になっていく。日の光りを浴びた夜は何ひとつ不安もなく、ただみつばちの羽音を思い返しながらぐっすりと眠り落ちた。