長崎・五島から外海へ 旅程5日目

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最終日は博多へ出て夜福岡空港から帰ることにしていた。ところが、抜けるような青い空になって、いてもたってもいられなくなった。外海をもう一度見ておきたかった。帰り支度を急ぎ、荷物を預けてバスに乗る。前日に迷った分、今日は長崎市内の土地勘も出てきた。どうせなら黒崎教会から少し先の遠藤周作記念館まで足をのばしてみようと思った。思っていたとおり、外海の海は碧かった。記念館から眺める角力灘(すもうなだ)の眺望はすばらしく、五島がうっすらと見えているではないか。年にまれにみる快晴とかで、昨日のことはすっかり忘れてやっぱり旅運がいいんだなと思ったりする。遠藤の作品は学生時代に『沈黙』、『死海のほとり』、『海と毒薬』、『白い人・黄色い人』ぐらいしか読んでいない。偶然、四谷の上智裏あたりの事務所を借りて、友人と仕事をしていた時に、作家が亡くなり、上智で葬儀がとりおこなわれたのだった。あの日の参列者の長い列は忘れることはできない。記念館に立ち寄ってから、あらためて読みたいと思っているものに、『堀辰雄』とフランソワ・モーリアックの『テレーズ・デスケルウ』がある。いつかきっとと必読書メモに書き加えた。記念館を後にして、道の駅で枇杷をおみやげに買ってから、黒崎教会まで歩いてみることにした。国道は行楽客の車の往来がはげしいので、脇道にそれて集落に入ってみた。一歩なかに入るとあたりはすっかり静まりかえる。小道を下るとひとりの老人が庭仕事をしていた。「こんにちは。この道をいくと黒崎教会まで行きますか」「行くには行くが、左へな」ちょっとむずかしいもしれないと何度も言われたが、方角はわかっているので下りてみることにした。畑の細道になったり、人家の入口につながる道になったり、山道になったりしながら、それでも道は道なので人の歩いた形跡をたどって進んで行った。夏蜜柑や枇杷の木が植えられた家の庭先を通り抜けると、先ほどまで遠くに見えていた角力灘の小さな漁港が間近になった。なんて充実した散歩道だったろう。このゆったりした時の流れの先に黒崎教会が待っていた。教会の十字架の上に真っ白な浮雲があった。

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外海の集落

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晴れの日の黒崎教会

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外海から見る角力灘 はるか先に五島がある