長崎・五島へ五島へ 旅程3日目

|

01.jpg

五島に来て三日目の朝を迎えた。初めての曇り空。窓を開けると近くの小さな丘に霧がたれこめている。広島の灰塚のような風景だなと思った。この日は、上五島の教会をまわることにした。鯛ノ浦教会、青砂ヶ浦教会(鉄)、冷水教会(鉄)、大曽教会(鉄)、中ノ浦教会、福見教会の順に見て回ることにした。(鉄)が鉄川与助の手がけた教会になる。鯛ノ浦教会へ着い頃、日曜日だったのでミサを終えた人々が丁度帰る時間だった。ファサードだけが煉瓦で木造建築の教会は、これまで見た教会に比べると大きく、入口の聖水盤は大きな貝だった。この教会のそばにはルルドの泉がある。岩から湧き出る清水の上にマリア像が置かれ、白い野バラが咲き乱れている。信者のひとりがその清水の前で十字をきって手を清めている姿は、カトリックなのか神仏なのかはわからない複雑な気持ちがした。青砂ヶ浦教会へ行く途中、米屋活版所というのを見かけた。長崎で本木昌造が活版印刷文化に触れたことが日本の活版のはじまりとすれば、五島にこうして印刷所があってもおかしくないなと思った。生憎、店は閉まっていて人から詳しい話を聞くことはできなかった。青砂ヶ浦教会も今回の旅ではメインに数えられていた教会のひとつだった。残念なことに工事中でシートにおおわれていた。冷水教会は鉄川が初めて建てた木造教会といわれている。外観は家の延長のようなもので厳粛な雰囲気はなく、アットホームな感じがする。立地条件がすばらしく穏やかな奈摩湾を見下ろせる。この会堂建築を出発点にいくつもの違った様相の会堂を建てた鉄川は、西洋の建築技術を模倣し試行錯誤で造りあげていったのだろう。矢堅目の公園に立ち寄り、かつて外敵の見張りのために守備兵がいたとされる場所から、海の眺望を楽しんだ。南の島とはうってかわり、ここは和の空気を感じる場所だった。このあたりから天気が崩れはじめ、時々小雨まじりになる。大曽教会に着いてみると思いのほか観光客が集まっていた。教会前は狭いのだが、タクシーや車が入ってきて、なかなか会堂の写真を写す機会を得ることができない。大曽教会は煉瓦造りで、八角のドーム型屋根に鐘塔を乗せた第一作目という。これまでいくつか見た火の見やぐらのような鐘塔とはちがい、ヨーロッパ教会のような威厳のある重力を感じる教会だった。近くの船先港付近には石油備蓄基地があり、対岸の教会と不思議な風景を作り出している。中ノ浦教会は鉄川の作品ではないが、木造建築で天井は折上げ式、また祭壇の部分が漆喰仕上げのリブヴォルト天井なのが特徴だ。さらに、主廊と側廊の間の壁面には木製の赤い十字型の植物と葉がデザインされている。単純なパターンの装飾が、教会内部に強い印象を与えるのは、スイスの片田舎ヘルギスヴァルドにあるWallfahrtskircheの内部を見た時に感じた強烈さに近いものがあった。中ノ浦教会から福見教会へ向かう道の入江は、エメラルドの静寂そのものだった。曇り空のせいもあってか、停泊している小舟や浮かんでいる島々が水面に反映して絵画のような美しさを醸し出していた。五島は五つの島と名称されながらも、実は大小あわせて60近い島々から構成されている。384号線を奈良尾港に向かって走って行く途中、数えきれない島を目にすることができる。蛇足だが古い小学校も見つけて思わず車を止め、校庭で止まってしまった学校の時間をしばらく過ごした。より道は楽しい。福見教会からは五島灘が見える。波の音も少し荒く厳しい環境に思える。寂しい集落に立つ煉瓦造りの教会は、入口に大きな白い聖母マリア像があり、会堂の玄関の窓にはザビエルのステンドグラスが描かれていた。実に質素な教会だ。教会周辺の集落は廃屋も数件あり、自生する植物に覆われている。花が美しく咲き乱れ、素朴ないい村だと直感した。
教会を中心に広がる五島の集落はそれぞれに土地の固有色が強い。漁港の色が濃い村、農村の色が濃い村など暮らし方がその村の性格を象っていることがよくわかる。だから村を歩いていると土地柄を感じて楽しくなる。こんなに小さな島なのに、景観も大きく変われば、暮らし向きも異なるとは驚きである。独自の暮らしをひっそりと営んできたことがよく伝わってくる。

goto02.jpg
鯛ノ浦教会のルルドの泉

goto03.jpg
鯛ノ浦教会

goto04.jpg
鯛ノ浦教会の内部

goto05.jpg
冷水教会

goto06.jpg
矢堅目の公園

goto07.jpg
大曽教会

goto08.jpg
大曽教会の内部

goto09.jpg
中ノ浦教会

goto10.jpg
中ノ浦教会内部

goto15.jpg


goto14.jpg


goto11.jpg
福見教会

goto12.jpg
福見教会

goto13.jpg