

中央本線の長坂駅を降りて、30分ぐらい山を下りまたのぼって歩いたところに、清春芸術村がある。11月に入って間もない日、残り少ないポラロイドフィルムで芸術村のアトリエを撮影しておきたいと思い、再び訪れることにした。蜂の巣をかたどったラ・リューシュはエッフェル塔のプランを出したギュスターブ・エッフェルが1900年のパリ万国博覧会で、仮設のワイン会場として設計したものといわれている。彫刻家のアルフレッド・ブーシェが解体後、モンパルナスから少し離れたところに移築をして、芸術家たちのアトリエとして開放したものだ。建物の内部は円形で、部屋が放射状に配置されている。20世紀初頭を代表する画家たちはにシャガール、スーチン、レジェ、モジリアニ、藤田らがいる。ボヘミアン的な生活を送ったこうした芸術家を総称してエコール・ド・パリ=パリ派といった。物価が高くなったモンマルトルから、芸術家たちが物価の安い左岸に位置するモンパルナスに移り住んでいった。当時のモンパルナスはエコール・ド・パリの中心といっても過言ではない。若き芸術家たちの作品を発表するアトリエ兼住居として開放されていたラ・リューシュは、酒を飲みかわし貧しい人々が集う場となっていく。パリでのラ・リューシュは退廃的なイメージが漂うが、清春では「芸術家たちが集う場」としての意を継承して、建造物を模倣し建てたもののようだ。
芸術家はみつばちのようにひしめき合い、ささやき合って、生きていることを形にして消えていく。「みつばちの木箱」の発足当時のコンセプトには、実は、ラ・リューシュのモデルが一部に組み込まれている。芸術の共同体の神髄にたちかえる時を、どうしても原点にもどって考えてみたくなった。
ラ・リューシュで半日を過ごした後、近くの村落を散歩した。小さなりんご園でりんごのパサージュを目にした。くぐったあの先に雲がつかめるところがあるかもしれないと思うと、急に気分が紅潮してくるのだった。








