喜びの過程

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マーサ・グラハムの踊りの中に喜怒哀楽をはっきりと体現するシーンがあったと記憶する。両足をそろえてぴょんぴょんとはね回る歓喜の表現。

蜜蓋を開けられた巣板は遠心分離器に並べられた。巣全体の状態に応じて速度を決めて機械を回転させる。溜まった蜜は一斗缶にそそぎ、蜜漉しにもう一度とおして空いた一斗缶に流し込んでいく。はちみつの一斗缶を持ち上げるには相当の力がいる。蜂やさんの奥さんは長年この夏の採蜜にかり出されるから、小さな体でもなんとか持ち上げて移動も注ぐこともできる。初めてのわたしは一斗缶ですら持ち上げられないというのに。
奥さんは夏の採蜜ほど嫌いなものはないという。毎年この時期がくると離婚をしたくなるだそうだ。
本当の喜びを味わうには通過するべき道のりがいくつもあるとわたしは思う。
午後をまわっても誰も作業をとめようとはしない。わたしは早朝からの労働ですっかり体力を消耗してしまい、頭がもうろうとしてきて立っていることすら容易でない暑さにとうとう負けてしまった。「ちょっと休みます」。すると「自分が無理と思ったら休んだ方がいいよ」蜂やさんの親戚で手伝いに来ていたおばさんが言った。蜂場の小屋に入って横になるとわたしはあっという間に寝入ってしまった。
耳もとでやぶ蚊のいやな羽音がして、目が覚めたのは午後3時を過ぎていた。外から聞こえてくる蜂やさんたちの声も午前中のような張り合いはなく、いよいよ採蜜作業も最終にさしかかっているようだと察知した。片付けをしてすべてが終了したころには夕方の真っ赤な太陽が海に重く沈みかけていた。
一日の終わりに「今日をありがとう」と言った。声にはでないほどの疲労感とじんわり喜びを感じた。

Comments:

すてき! 疲労と興奮とが同時に伝わってきます。よかったね!
わたしも違う形で、からだを使った仕事を始めたこの夏。いろいろな「初めて」を通過中です。:)

想像を絶する労働でした。それだけに喜びは少しずつ実感できるようになっています。いろいろな意味でわたしに大きな自信を与えてくれる夏の一日の大仕事でした。

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