アインジーデル修道院
重たい木戸を押して会堂に入る。薄暗い室内は華やかなバロック彫刻で装飾され、まず目に入ったのが、黒のサルバトーレだった。ここに、多くの人々が巡礼の地として祈りを捧げに来る黒マリアが安置されている。修道士たちが黒のガウンを着てマリアを讃美している。一歩、この空気の中に足を踏み入れてしまうと、今自分がはたして何世紀を生きているのか錯覚をおこしてしまう。
会堂の左右と正面には3台のパイプオルガンが配置されている。そのうち2台は男性しか演奏をすることができない。女性が演奏できるのは向かって右側のフラウエン・オルゲルだけだ。
私は、この修道院で忘れえない体験をした。
修道院内は通常は関係者以外は入室ができないし、しかも女性は禁止領域が多い。
パーター・テオは本当にその中でも公的な場所を通って院内の一部を案内してくれた。いくつ扉があるのだろうかと思われるほど、いたるところに鍵がかけられた回廊を歩いた。鍵は扉のこちらと向こうをつなぐ唯一の特権だ。神学を勉強する学校、図書室、管楽器やチェンバロなどの楽器保管室……。どこをとっても明るく清潔で静かな館内だ。それは当然と言えよう、修道士たちは終始祈って暮らすのであるから。地下には事務所や各専門家の研究室などがあって、離れに食堂がある。
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