北欧の国デンマーク。バルト海に浮かぶ岩盤の島へ渡る。
寒くて、短い夏の話
畑の先の海
ボーンホルムの風景で好きなのは畑の向こうに見える海だ。畑といってもそれほど手をかけたものではなく、雑草と野菜が混在して植わっている。小さな畑は柵もないので人が自由に入ることだってできる。とても魅力的な菜園だ。草むらを押し分けて海を眺める。今日は風も弱く穏やかな波だ。「嵐の時はどうなるのだろう」「冬はどんよりと暗くて寒いだろう」海の彼方からやってくる季節風のことを思いめぐらすと少し気がめいる。
そんなことを考えているうちに夏のはずなのに肌寒い風が吹いてきた。
ボーンホルム美術館
1993年に地方美術館として開館した。白い現代建築の内部はエンタランスから階下の展示空間に沿って水が流れている。天井や大きな窓ガラスからは自然光がたくさん差込み、展示室はとても明るく開放的だ。四角い窓のフレームから見える風景や建物も1作品として成立するような機能美にすぐれ、生き生きとした美術館だ。絵画コレクションは「ボンホルム派」と称した地元の画家たちで、Edvard Weie, Karl Isakson, Olaf Rude, Kaesten Iversen, Niels Lergaard, Oluf Hostなどが陳列されている。
カフェや中庭から岸壁を降りて海に面した岩場まで行ける散策路がある。
www.bornholms-kunstmuseum.dk
美術館の中庭で友を想う
ボーンホルム美術館のカフェから中庭に出た。そこには鉄のオブジェが何本も立ちならんでいて、ずっと見ていると墓場にきたような気がした。わたしはこの場所がとても気に入った。わたしには何年も親しくしていた現代美術家の友人がいた。毛むくじゃらの熊のような風貌で、繊細さと無邪気な子どものような心を持った作家だった。その友人が2000年の春に43歳の生涯を終えた。病は若い身体を急速に蝕んで行った。この錆びた鉄は頑強そうでありながら、脆く崩れ去ったその体を想い起こさせる。時が流れても、友の死を素直に受け入れることは難しい。ここにきてやっと1人で追悼する気持ちになった。
コペンハーゲンから2時間あまりのシェラン島にギレライエというところがある。海をのぞむ丘にキルケゴールの記念碑が建てられている。
真理とは、イデーのための生ではなくて何であろう
ギレライエ・キルケゴール、1835, August 1st
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